相続登記の申請の義務化

相続登記
相続登記

このページでは「相続登記の義務化」について、法律や登記にあまり馴染みのない方にもご理解いただけるように、わかりやすく丁寧に解説いたします。

最近ご相談者様からこの「相続登記の申請の義務化」についていろいろご質問をいただきます。
良くいただくご質問として以下のようなものがあります。

・いつから義務化されるの?
罰金が科せられるってホント?
昔の相続にも適用されるの?
誰に相談すればいいの?

司法書士 伊東
司法書士 伊東

このような疑問にお答えする記事を書きました

司法書士として10年以上活動してます
地元の横浜で、個人事務所を経営しています

解説するのはこの人

・相続を主に活動している司法書士
・司法書士の経験は10年以上
・東日本大震災の復興支援に4年間、岩手県釜石市に移住して釜石市役所の職員として復興支援に従事
・所有者不明土地問題の解消作業にも従事

相続登記の申請が義務化されることになりました。
登記をしないと罰則が科せられる可能性があります。
罰則が科せられないためにもわかりやすく解説いたしますのでご安心ください。

相続登記はなぜ義務化された?

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しが行われ、2021(令和3)年4月1日に民法等の一部を改正する法律が成立しました。
所有者不明土地等の発生予防利用の円滑化の両面から総合的に見直され、その中で登記がされるようにするための不動産登記制度の見直しが行われ、相続登記の申請が義務化されることになりました。

今までは相続が発生しても相続登記がされないことがありました。
相続登記がされない理由として

相続登記がされない理由
  • 相続登記の申請が義務ではない
  • 相続登記の申請をしなくても、相続人が特に不利益を被らない
  • 都市部への人口集中により、地方で土地の所有意識や利用のニーズが低下している
  • 相続した土地の価値が低い場合は、費用をかけてまで相続登記の申請をしたくない

などが理由と言われています。
そのため、所有者不明土地が増えてきました。
所有者不明土地とは

所有者不明土地とは
  • 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
  • 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

相続登記をしないまま何代も相続が繰り返されると、相続人がねずみ算式に増加していきます。
所有者不明土地には以下のような問題があります。

所有者不明土地の問題
  • 所有者を探すための戸籍の収集等、多大な時間費用がかかる
  • 土地が管理されず放置されがち
  • 公共事業復興事業民間取引等の土地の利活用が阻害される

高齢化が問題になっている今、今後さらに事態が深刻化する恐れがあります。
そこで、相続登記がされるように不動産登記制度が見直されて、相続登記の申請が義務化されました。

義務化の内容は?

登記の申請義務化されたのは次の2つです。
それに伴い相続人申告登記が新たに新設されました。

登記の申請義務化
  • 相続登記の申請義務化
    (相続人申告登記の新設)
  • 住所等の変更登記の申請義務化

いつから義務化?

相続登記の申請義務化は、令和6年4月1日から施行(実際に運用が開始)されます。
住所等の変更登記の申請義務化は、施行日はまだ決まっていません。
令和8年4月までに施行されることになっています。
住所等の変更登記の申請義務化はまだもう少し先なので、ここでは相続登記の申請義務化について解説します。
相続登記の何が義務になったのでしょうか

義務化のルール

相続登記とは、不動産の所有者がお亡くなりになったときに、不動産の名義を相続人に変更する手続きのことです。
一般的には相続の名義変更などと言ったりします。
今回の相続登記の義務化とは、『不動産の所有者がお亡くなりになったときの、不動産の名義を相続人に変更する手続きが義務化された』ということです。
相続(特定財産承継遺言を含む。)や遺贈により不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました。

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
(不動産登記法第76条の2)

いつまでに登記しなければならないの?

いつまでに登記しなければならないのでしょうか
自分が相続人であることとそれによって不動産の所有権を取得したこと両方を知った日から3年以内です。

いつまでに登記?
  • 自己のために相続の開始があったこと
  • 不動産の所有権を取得したこと

例)お父さんが亡くなった
①自分はお父さんの息子なので、自分はお父さんの相続人だ。
②お父さんは自宅の家を持っているので、相続人の自分がお父さんの家を相続した。

この例では、息子さんは①と②の両方を知った日から3年以内に相続の登記をしなければなりません。

昔の相続にも適用される?

令和6年4月1日の施行日前に発生していた相続も申請義務の対象になります。
ただし、相続登記の申請義務の履行期間は施行日から3年間とされました。
昭和や平成の頃に発生していた相続の登記がまだされていなかったとしても、施行日(令和6年4月1日)から3年間は罰則を受けることはありません。
ですが、相続登記をしない間にさらに相続が発生すると、相続人が増えてしまい、遺産分割協議が困難になるおそれがあります。
なるべく早めに相続登記をしましょう。

すぐに相続登記ができない場合は?

相続が発生して、自分が相続人であることと不動産の所有権を取得したことがわかったけど、すぐに相続登記ができない場合はどうすればいいのでしょう
そのような場合に備えて、相続人申告登記が新設されました。

相続人申告登記とは?

相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、新たに相続人申告登記が設けられました。
相続人が多数でなかなか話し合いがまとまらない場合や、遺産分割で揉めている場合は、相続の開始から3年以内には相続登記の申請ができないこともあるかもしれません。
その場合は、3年以内に法務局の登記官に対して以下を申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされます。

相続人申告登記
  • 所有権の登記名義人について相続が開始した旨
  • 自らがその相続人である旨

相続人申告登記をすると、申出をした相続人の氏名・住所が登記簿に記載されます。

誰が申出できる?

申出ができるのは相続人です。
相続人が多数いる場合でも、そのうちの1人単独で申出できます。
他の相続人を含めた代理の申出も可能です。
3年以内に相続登記の申請ができない場合は、相続人申告登記を検討されてみてはいかがでしょうか。

罰則があるってホント?

相続登記の申請義務を負った者が正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されることになります。

過料とは?

過料とは、法令に違反した場合に制裁として科せられる行政上の秩序罰です。
罰金のような刑事罰とは異なります。
正当な理由がないのに登記申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の適用対象となります。

正当な理由とは?

以下のような場合に『正当な理由』があると考えられています。

正当な理由
  • 数次相続(※)が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている
  • 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある

※数次相続とは、相続登記をしないうちに相続人が死亡して、さらに相続が発生した場合のことです。
『正当な理由』の具体的な類型については、今後通達等で明らかになる予定です。

突然過料の通知が届く?

急に罰則の通知などが郵送されるのでしょうか
いえ、突然過料の通知が届くことはありません。
法務局は義務を履行していない相続人に対して、相続登記の申請義務を履行するように催告をします。
そこで、催告に応じて申請をした場合は、過料の通知はされません。
催告がされたにも関わらず、正当な理由なく申請をしなかった場合は、裁判所に過料事件の通知がされ、裁判所にて過料を科す旨の裁判がされることになります。
過料が科されないためにも、催告をされる前に早めに相続登記をしましょう。

遺産分割について

相続が発生したら、相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合いを行いますが、その話し合いのことを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割の結果を不動産登記に反映させるため、成立した遺産分割協議の内容を踏まえた登記申請をすることが義務付けられています。

遺産分割協議が成立したけど、相続登記ができない場合

相続の発生から3年以内に遺産分割協議が成立したけど、書類がそろわないなどまだ相続登記の申請が難しい場合は、3年以内に相続人申告登記の申出をするか、法定相続分での相続登記を申請します。
その後、書類がそろう等準備が出来次第、遺産分割協議の内容を踏まえた相続登記の申請を行います。
この場合は、遺産分割協議が成立した日から3年以内です。
相続の発生から3年ではないので注意です。

3年以内に遺産分割協議が成立しなかった場合

相続の発生から3年以内に遺産分割協議が成立しなかった場合は、3年以内に相続人申告登記の申出をするか、法定相続分での相続登記を申請します。
その後、遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議が成立した日から3年以内に遺産分割協議の内容を踏まえた相続登記の申請を行います。
遺産分割協議が成立しなかった場合は、相続登記の申請義務はありません。

前項前段の規定による登記(法定相続分での相続登記)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
(不動産登記法第76条の2第2項)

遺言書があった場合

遺言書とは、お亡くなりになった方が生前に、自分の財産を誰にどのように遺すかを示した書類のことです。
遺言書があった場合は、不動産の所有権を取得した相続人が取得したことを知った日から3年以内に遺言の内容を踏まえた登記の申請を行います。
この場合、不動産の所有権を取得した相続人が一人で申請することができる単独申請となります。
遺産分割による相続登記と異なり、他の相続人と話し合って遺産分割協議をまとめたりすることなく登記ができるので、なるべく早めに登記を申請しましょう。

相続放棄があった場合

相続放棄とは、お亡くなりになった方の権利や義務を一切受け継がないことを示す意思表示のことです。
相続人の一部が相続放棄をした場合は、その者は初めから相続人とならなかったものとみなされます。
なので、相続放棄をした人を除いた他の相続人は、相続開始時にさかのぼって相続放棄をした相続人を除いた法定相続分の割合で共有となり権利を取得します。
他の相続人は、相続放棄を知った日から3年以内に、相続放棄後の割合による相続登記の申請義務を負います。
その後、遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議が成立した日から3年以内に遺産分割協議の内容を踏まえた相続登記の申請を行います。

まとめ

相続登記の申請が令和6年4月1日から義務化されます。
相続が発生してからおよそ3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。
この義務に反すると、10万円以下の過料に処されることになります。
相続が発生したら、なるべく速やかに相続登記をしましょう。
3年以内に遺産分割協議が成立しない場合、成立したけど登記ができない場合、遺言書があった場合、相続放棄をした相続人がいた場面などいろいろ想定される場面を解説しました。
どうしても相続登記の申請をすることができない事情がありましたら、司法書士にご相談いただくと、相続登記の申請の義務を免れる方法をご説明いたします。
相続が発生したら司法書士にご連絡ください。

ご相談・お問い合わせ

相続登記の申請の義務化について、気になることやご相談がございましたら、お電話又はお問い合わせから伊東光司法書士事務所にお気軽にお問い合わせください。
相続や債務整理のこと、気になる費用のことなど気になることは何でもお聞きください。
伊東光司法書士事務所では、どんなご相談でも親切、丁寧にわかりやすくご案内いたします。
ご相談いただきました内容は、法令及びプライバシーポリシーに基づき厳重に管理して、法令による場合を除いて第三者に情報を開示することはありませんので、安心してご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました